【第1回の趣旨】
ウェルビーイングでビジネスを成長させる研究会では、『ウェルビーイング』を中心としたビジネス展開や、ウェルビーイング視点の価値創造を行っているさまざまな企業の視察を通じて、ウェルビーイングでビジネスを成長させるヒントをつかむ、あるいは事業構造を変革するきっかけをつかむための機会を提供している。
今回は「ウェルビーイングビジネスを体験・体感する」をテーマに、2社のゲスト講師からこれまでの会社・事業の成長の歴史、成長してきたポイントを伺うとともに、ウェルビーイングビジネスのターゲットや商品についてディスカッションを行った。
開催日時:2024年2月20日(埼玉開催)
専務取締役 営業本部長 白石 純也 氏
はじめに
温泉道場は「おふろから文化を発信する」という企業理念のもと、おふろとサウナを媒体(メディア)として地域の魅力を発信する施設を展開。各施設がそれぞれ「違い」を持ち、グループ内の施設ごとに特色のある店舗を展開している。
温泉(おふろ)は、日本人とは切っても切り離せない大切な文化であり、もっとも身近なレジャーとしての魅力を備えている。世界的に見ても、観光や温泉は今後非常に伸びていく分野であり、温泉(おふろ)を通じて地域の課題解決をしたり、コミュニティ作りが進む可能性を秘めている。
温泉道場は温泉(おふろ)を核に様々な取り組みを実施。今回はグループ内の運営施設のひとつ、白寿の湯と敷地内にある温泉サバ陸上養殖場(新規事業)を視察し、白寿の湯で展開されている様々な施策をウェルビーイング視点から研究した。
白寿の湯館内は居心地が良く長居したくなる空間づくりがされている。
ハンモックや掘りゴタツのようなお休み処が併設されていた
まなびのポイント1:ヒトの成長に向き合い、魅力あるサービスづくりにつなげる
入社3年で副支配人、グループマネージャーを目指せる研修プログラムが整備されており、新卒・中途採用者が入社して安心して成長を目指せる仕組み・仕掛けが構築されている。
新卒採用においては、志望度の高い100名のエントリーの中から約10名を採用できており、社員の平均年齢は今年で20代に若返る予定。採用してから時間とコストをかけて育てる考え方で、非常に若く活力のある企業風土が組成されている。
事業を中心に展開している埼玉県出身者の割合は4割程度。県外のメンバーが、地域性の強い店舗で早く馴染み、能力発揮を促していくために、メンター・ブラザーシスター制度が機能し、価値観共有を目的とした温泉道場ゼミ(ほぼ毎週開催)を定期的に開催。「Go Out20」という施策の中では、業務時間の20%は自分の所属施設以外の店舗横断型のプロジェクトなど特色のある取り組みがされている。
まなびのポイント2:排水なし海水なしサバ養殖事業への挑戦(新規事業)
コロナ禍の中で、山崎社長の決断で養殖事業はスタート。当初はサケなど比較的よく養殖される魚種が候補であった。しかし、プロジェクトメンバーの発案で、白寿の湯に来れば、海なし県埼玉で、サバを食すことができる場所を提供できれば特長になるのではないかという発想でサバの養殖がスタート。
しかも、排水なし海水なしの養殖法への挑戦により、寄生虫のリスクをゼロにできることから、生食での提供が可能になり、プラスアルファの付加価値に繋がっている。今後はチョウザメの養殖へのチャレンジを検討している。
できるできないの発想ではなく、施設での満足度をどう向上させるかという出口からの逆算発想で、チャレンジをすることが大事である。顧客価値の飽くなき追求が顧客満足につながり、結果的に顧客がウェルビーイングとなるのである。
新規事業である温泉サバ陸上養殖場の視察
まなびのポイント3:地域特性に応じた店舗づくり
温泉道場の運営施設においては、各店舗全く顔の違う店舗づくりが行われている。白寿の湯のある埼玉県北部では、地域性として糀・発酵文化が根付いている地域であり、糀・発酵をコンセプトに店舗づくりがされている。施設内においては、旬の新鮮な農産物の販売もされており、視察当日に販売されていたイチゴは、即日売り切れることも多いという。
来るたびに変化のある空間が演出されており、また店舗コンセプトに応じた、糀料理のメニューも充実している。店舗コンセプトと提供サービスの一致、農産物販売や養殖サバなど話題性提供による変化づくりをうまくミックスさせて、顧客満足度を高め安定した顧客基盤を築いている。
同社が掲げるクレドには『迷ったらお客様を見る』とあり、正にこの姿勢がウェルビーイングビジネスに繋がっている。また地域特性に応じて各店舗の特徴は異なるが、『お客様の滞在時間を長くする』というコンセプトは共通であり、長い滞在時間の中でお客様との接点が多いことが高い顧客満足につながり、顧客ウェルビーイングに繋がると学んだ。
白寿の湯館内は地域特性に応じた店舗づくりが行われる。白寿の湯のテーマは「発酵」。当日は地場でとれたイチゴが販売されていた
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