【第1回の趣旨】
当研究会では、個(企業)から地域(地域活性化)へ展開し、収益モデルを創造することをメインテーマとし、「持続可能な社会」と「自社の持続的な成長」の両立を実現することを先進事例から学ぶ。第1回では、地域の自然を生かし、地域活性化のビジネスモデルを構築している企業を紹介、また、観光庁、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局より講師2名をお招きし、日本における観光業の潮流や今後の展望、日本版CCRC(生涯活躍のまち)の実現に向けた取り組み事例などをご講演いただいた。
開催日時:2024年2月21日(東京開催)
代表取締役 黒野 崇 氏
はじめに
2007年、神奈川県三浦郡葉山町の大正時代の古民家を再生し、会員制アウトドアフィットネスクラブとして創業したBEACHTOWN。同社のミッションは「自分のいのち。社会のいのち。地域のいのち。私たちはアウトドアフィットネスを地域に導入することで、3つのいのちを健康にできます。」であり、創業以来この使命に向き合い続けてきた。事業を展開する過程で酸いも甘いも経験してきたが、ミッションをぶらさず追い求めていくことで、現在は6事業を29のエリアにて展開するに至ったという。都市公園などのPark-PFIや公園指定管理のほか、大手鉄道会社など上場企業との連携も多数手がける。地域活性化の起爆剤として、「自然」を生かしたアウトドアフィットネスにて、地域のにぎわい創出、健康づくりに貢献している。
BEACHTOWNが描く、アウトドアフィットネスの構想図。「インドア」×「アウトドア」、「日常」×「非日常」それぞれを融合させるビジネスモデル。自然との一体感を味わうことで、忙しい日常の中で閉じていた 人間が本来持っている外向きの力、五感を呼び起こし、本来の自分自身を取り戻せるきっかけを提供
まなびのポイント 1:ライフスタイルの変化に応じたニーズを捉える
2006年にアクティブライフ、2007年からはランニングという新しいライフスタイル(例:皇居ランニングコース)が人々の暮らしに定着。さらに2007年はiPhoneが世にでた年代であり、世の中のライフスタイルが大きく変化した時期であった。それらの変化(ニーズ)を的確に捉え、同社はこれまでなかったアウトドアフィットネスサービスを展開。「青空の下で……」「海の上で波を感じながら…… 」「早朝の澄んだ空気の公園で…… 」など、利用者が向き合うのは自然そのものであり、美しい景色や移り変わるロケーションそのものが、高付加価値につながっている。2007年当時30~40歳代だった世代は、60歳以上となった今でもその多くが地域でアクティブに活躍・生活しているという。楽しみながら、遊びながら、気が付いたら健康になっていたという好循環を生んでいる事例である。
まなびのポイント 2:本当の健康づくりは自然や公園にあるという考え
薬と違い、フィットネスやスポーツで健康を作るためには最低でも3カ月は継続しなければ効果が出ない。また、せっかく効果が出てもやめてしまえば元に戻ってしまう。フィットネス業界では「継続率」が大きな課題であった。きつく単調なトレーニングよりも、自然の中で、美しく「続けること」が重要であると気付いた黒野氏。安全で効果的に、遊びながら、気がついたら健康になること。さらには、心の開放感もプラスされることをコンセプトとして健康づくりの本質を捉えたサービスを展開している。また、定額課金型の会員制ビジネスモデルであることが、参加者同士のつながりや、新しいコミュニティーの形成を促し、継続率という課題を解決した。
サップヨガ(サップ:サーフボードより少し大きいボード)をする参加者。海の上で波にユラユラと揺られながら、海との一体感を体験
まなびのポイント 3:非日常を日常に、自然回帰へ
本来人間とは自然の中で生活してきた生き物である。しかし、いつの頃からか自然を離れ、壁に囲まれた生活を過ごすことが当たり前になっていた。さまざまな原因が考えられるが、理由は時代とともに変化してきた人間の生活様式や社会環境にある。ESGやサスティナビリティなど、環境に対する価値観が再び高まっているのは、人間が再び自然とのつながりを求めていることの表れとも言えよう。BEACHTOWNのアウトドアフィットネスは、自然と触れ合い、心身をリフレッシュするだけでなく、非日常を日常に持ち込むことができる。
「都会の喧騒から離れ、自然の中で体を動かすことで活力と充実感を得たい」と願う現代社会に生きる人々にとって革新的なサービスだ。
砂浜でヨガをする参加者。波の音を聴きながら呼吸を深め、楽しみながら身体を動かし、心身ともにリフレッシュ
The post 個から地域へ展開し、地域活性化を実現するBEACHTOWNのビジネスモデル ~個人が地域に貢献し、持続可能な地域をつくる~:BEACHTOWN first appeared on メディアサイト「TCG Review」.